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FSテクニカル株式会社
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FST工法に引続き、2017年度3月16日FSNBアンカーも国土交通省のNETIS(新技術情報提供システム)に登録されました。
FST工法&FSコラム工法 登録番号:KT-150123-VR
FSNBアンカー 登録番号:KT-160150-A

基礎知識The Basics

ピンニング工法に関する基礎知識

 ピンニング工法は古くて新しい工法です。特に地震が多発する現在、 皆様を守る見直されるべき工法ではないでしょうか(「ピンニング工 法の基本的考え方」参照)

 弊社は国土交通省大臣官房庁営繕部監修『建築改修工事監理指針 平成28年版(上巻)』(一般財団法人建築保全センター、平成28年)(以下、『監理指針』と略す)にしたがいビル外壁の改修を行ってまいりました。この『監理指針』に忠実であろうとすればするほど、実際の現場に立ちその事象を目の当たりにしますと、指導内容にまだ至らぬ点が多々在るように思えてなりません。
 実際、『監理指針』も、3~4年毎に改定され、だいぶその内容も変更されてまいりました。「ピンニング工法」も多少の変更がなされてきたものの、しかしその内容は旧態依然のままであります。また、充填材として使用される接着剤は、ポリマーセメントスラリーを充填する場合もありますが、多く見られるのがエポキシ樹脂です。
 このエポキシ樹脂を充填するには2つの工法があり、その一つがアンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法であり、もう一つがアンカーピンニング全面エポキシ樹脂注入工法であります。しかし後者のアンカーピンニング全面エポキシ樹脂注入工法は、あまり一般化されている工法とはいえません。
 したがいましてピンニング工法を説明するにあたり、前者のアンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法を説明するのが、適切であると思われます。確かに、説明をアンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法に限定するとはいえ、技術的には、両工法が充填部を壁面全体にするか、部分にするかの相違ですから、注入方法における技術的相違はありません。それゆえ以下のピンニング工法に関する基礎知識は、アンカーピンニング全面エポキシ樹脂注入工法にも、十分に利用されうるものと考えております。


                      目   次

1. ピンニング工法の基本的な考え方
2.タイル・モルタル外壁の主な種類 ――マンション等を初めとする
   2-1.PC 板の壁
   2-2.ECP(押出成形セメント板)にタイルを張り付けた壁
   2-3.ALC 板にタイルを張り付けた壁
   2-4.直に張り付けた壁
   2-5.RC 構造の壁
   2-6.モルタル壁
3.事前調査と決定事項
   3-1.事前調査
   3-2.1㎡当たりの施工本数と施工ピッチ
   3-3.エポキシ樹脂の注入量
   3-4.エポキシ樹脂の特性
   3-5.注入方法
4.使用機具
   4-1.乾式振動ドリル
   4-2.湿式低振動・低騒音型ドリル
   4-3.注入器具 -ノズルについて
      ・底部注入ノズルによる注入
      ・最深部注入のノズルによる注入
      ・『監理指針』の注入方法
   4-4.アンカーピンについて
      -丸棒上全ネジ切ピンとキャップ付全ネジ切ピンとの相違―
5.外壁剥離問題に対する近時の対策01 -注入口付アンカーピン
   5-1.『建築改修工事監理指針』における矛盾
   5-2.注入口付アンカーピンの問題点
      ・モルタル壁
      ・タイル外壁
   5-3.打撃を回避するための対策
6.外壁剥離問題に対する近時の対策02 -カバーリング工法の問題点
7.外壁剥離に対する喫緊の課題03 -剥離剤処理問題
8.おわりに



7.外壁剥離に対する喫緊の課題03 -剥離剤処理問題


 本稿「3-2」において、昭和50年代以前、タイル仕上げ外壁は手張り工法が一般的で、それ以降、パネル工法、PC板先付け工法、型枠先付け工法、モルタル厚1~3mmの直張り工法等の新たなタイル仕上げ工法が、マンション等のコンクリート建造物において主流となったことについて触れました。

 実際、古くからあるRC構造のタイル仕上げ外壁の建造物の一部が今なお健全な姿をとどめているのに対し、近年の建造物のタイル仕上げ外壁は、非常に短いサイクルで、改修されています。これが、技術的要因に起因するならともかく、あるまじきことに、人為的な問題が多々介在しているのです。

弊社の経験から、この一例を紹介してみましょう。某元請会社から、近年、多くのマンション等で採用されている直張り工法のピンニング工事を受注しました。このタイル外壁は、躯体に1~3mm程度モルタルを塗り、直接、タイルを張り付けた直張り工法でした。したがいまして弊社は、タイルと張り付けモルタルの剥離、張り付けモルタルと躯体の剥離が考えられましたので、二層剥離を想定して樹脂注入工事を行いました(本稿「2」の「4.直に張り付けた壁」参照)。

 ところが工事が終了してから2~3年後、躯体にピンを打ち込んだ部位は落下しておりませんでしたが、外壁の剥離面積が拡大したという相談を、弊社は元請会社よりうけました。そこで壁面をカットし、樹脂の注入状況を確認してみたところ、樹脂は円形状に広がっているものの、その円形状に広がった接着面が全く躯体に接着していませんでした。

 このエポキシ樹脂の接着強度は、コンクリート強度を凌ぐ、1cm2当たり約80kgfの圧倒的接着効果をもつにもかかわらず、躯体コンクリート表面は傷もなく平滑で、張りモルタルが躯体コンクリートに接着した痕跡すらありませんでした。もしも樹脂の接着効果を無効にした原因が外壁改修業者にあるとすれば、二つの要因が上げられるだけです。第一は、エポキシ樹脂が二液性の混成樹脂であるため、混成比率に誤りをおかしたこと。第二は、湿潤性により樹脂の接着面が白化し、接着力を低下させること、以上の二点が上げられます。

             

2011年の東関東大震災のおり東京都内で発生したネットの剥離(震度5)。これは離型剤処理、注入口付アンカーピンの固定効果不良、樹脂注入不良等に起因しているものと考えられます。(『月刊建築技術 6月号大737号』(株式会社建築技術、平成23年)p.60.


 しかし、樹脂は透明な状態で硬化しており、混成比率にも全く異常はありませんでした。ではこれ以外にコンクリート強度を凌ぐ樹脂の接着力を阻害する要因があるのでしょうか。化学の観点から見た場合、樹脂の混成比率と乾燥に問題がなければ、仕上げモルタルと躯体表面の間に接着を阻害する物質が介在しているとしか言えません。もしここに介在物質が在るとすれば、唯一、離型剤以外に考えられません。すなわちコンクリート構造体は、木製や金属製の型枠にコンクリートを流し込み、その硬化後に、型枠を取り外して造成されていくのですが、その際、この型枠の取り外しを容易にするため、型枠の表面に油性の離型剤が塗られます。その油分が躯体表面に残り、樹脂の接着を阻害する要因ともなるのです。

 国土交通省大臣官房官庁営繕部監修『建築工事監理指針 平成28年版(下巻)』(一般社団法人公共建築協会、平成28年)p.345における第15章「左官工事」の下地処理において、モルタルを塗る下地コンクリートに対し、高圧水洗処理による目荒らし工法等が指定されています。この目荒らしは下地コンクリート面を粗面にすることで、モルタルの接着を補完するのですから、離型剤処理対策にとっても、非常に効果的であるように思われます。

 ただ残念なことに、同書において目荒らしを指定しているにもかかわらず、これが離型剤処理に関わることを意識していません。そのため、分業化された各専門業者、例えば躯体コンクリートを建造するもの、タイル張りをするもの、それぞれが何の連関もなく各自の作業を行うため、離型剤処理が軽視され、往々にして下地コンクリートの目荒らしが省かれてしまうことが多々見られ、この目荒らし作業の軽率な省略により、外壁が剥離してしまうこともあるのです。

高圧水洗(50N/㎟)の例 超高圧水洗の例 超高圧水洗の例
高圧水洗処理による目荒らし後のコンクリート表面状態(JASS 19より)
国土交通省大臣官房官庁営繕部監修『建築工事監理指針 平成28年版(下巻)』(一般社団法人公共建築協会)p.346

 しかし外壁を改修する専門業者の中には、外壁剥離問題が注入口付アンカーピンの固定効果不良や、樹脂注入不良と重複するため、外壁の落下が自分たちの施工方法に起因するものと思い込み、勉強会などを開く業者もおりますが、問題が他業種の離型剤に内在していることに気付いていないため、問題解決は堂々巡りの様子を呈せざるをえない状況に陥っているように思われます。この意味で、今後、離型剤処理の問題は、樹脂注入不良や注入口付アンカーピンの固定効果不良と並び、多いに注目されてしかるべき問題だと思われます。

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