ピンニング工法に関する基礎知識

ピンニング工法は古くて新しい工法です。特に地震が多発する現在、 皆様を守る見直されるべき工法ではないでしょうか(「ピンニング工 法の基本的考え方」参照)

 弊社は国土交通省大臣官房庁営繕部監修『建築改修工事監理指針 平成28年版(上巻)』(一般財団法人建築保全センター、平成28年)(以下、『監理指針』と略す)にしたがいビル外壁の改修を行ってまいりました。この『監理指針』に忠実であろうとすればするほど、実際の現場に立ちその事象を目の当たりにしますと、指導内容にまだ至らぬ点が多々在るように思えてなりません。
実際、『監理指針』も、3~4年毎に改定され、だいぶその内容も変更されてまいりました。「ピンニング工法」も多少の変更がなされてきたものの、しかしその内容は旧態依然のままであります。また、充填材として使用される接着剤は、ポリマーセメントスラリーを充填する場合もありますが、多く見られるのがエポキシ樹脂です。
このエポキシ樹脂を充填するには2つの工法があり、その一つがアンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法であり、もう一つがアンカーピンニング全面エポキシ樹脂注入工法であります。しかし後者のアンカーピンニング全面エポキシ樹脂注入工法は、あまり一般化されている工法とはいえません。
したがいましてピンニング工法を説明するにあたり、前者のアンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法を説明するのが、適切であると思われます。確かに、説明をアンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法に限定するとはいえ、技術的には、両工法が充填部を壁面全体にするか、部分にするかの相違ですから、注入方法における技術的相違はありません。それゆえ以下のピンニング工法に関する基礎知識は、アンカーピンニング全面エポキシ樹脂注入工法にも、十分に利用されうるものと考えております。

目   次

  1. ピンニング工法の基本的な考え方
  2. タイル・モルタル外壁の主な種類 ――マンション等を初めとする
    2-1.PC 板の壁
    2-2.ECP(押出成形セメント板)にタイルを張り付けた壁
    2-3.ALC 板にタイルを張り付けた壁
    2-4.直に張り付けた壁
    2-5.RC 構造の壁
    2-6.モルタル壁
  3. 事前調査と決定事項
    3-1.事前調査
    3-2.1㎡当たりの施工本数と施工ピッチ
    3-3.エポキシ樹脂の注入量
    3-4.エポキシ樹脂の特性
    3-5.注入方法
  4. 使用機具
    4-1.乾式振動ドリル
    4-2.湿式低振動・低騒音型ドリル
    4-3.注入器具 -ノズルについて
    ・底部注入ノズルによる注入
    ・最深部注入のノズルによる注入
    ・『監理指針』の注入方法
    4-4.アンカーピンについて
    -丸棒上全ネジ切ピンとキャップ付全ネジ切ピンとの相違―
  5. 外壁剥離問題に対する近時の対策01 -注入口付アンカーピン
    5-1.『建築改修工事監理指針』における矛盾
    5-2.注入口付アンカーピンの問題点
    ・モルタル壁
    ・タイル外壁
    5-3.打撃を回避するための対策
  6. 外壁剥離問題に対する近時の対策02 -カバーリング工法の問題点
  7. 外壁剥離に対する喫緊の課題03 -剥離剤処理問題
  8. おわりに