以上、「1.ピンニング工法の基本的考え方」において述べましたように、近年、福島県 や熊本県における大規模地震により、目を覚まされたかのように関東圏における直下型地震、東南海地震等の話題が周期的に語られるようになりました。このような中でいわゆる カバーリング工法が着目されたのですが、私どもは敢えてこの動向に警鐘乱打いたします。従来の建築がスクラップ&ビルトの時代であったこと、ここから脱却する手段がどこに あり、どのようにして「建築物の長寿命化」をはかりうるのでしょうか。そのためには「建設時の性能と、維持管理段階の適切な補修・更新等を合理的に組み合わせることが必要」(日 本建築仕上学会タイル張り外壁の保全技術体系化委員会編『タイル張り仕上げ外壁の保全技術―調査診断から改修工事後の保全技術まで―』(テツアドー出版、平成25 年)pp.6~7) であります。 この点で、私どもの経験がどれ程その組み合わせに役立ちえたかは分かりませんが、た だいえることは、単に場当たり的な問題解決案を出すのでなく、従来の技術の問題を各専門職の技術者が細部にわたり徹底的に解明するだけでなく、各職種の領域を越え、学際的 に構造体を各専門技能者が総合的に解明していくことこそ、本来の合理的で確実な補修方法が見出されるのでないかと考えております。