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1. ピンニング工法の基本的な考え方

巨大な重量のコンクリート建造物には応力・技術的要因・気候等の諸条件が重なり、経年的に建造物自体は劣化せざるをえません。その中でも特に影響を受けるのがコンクリート建造物の外壁であります。このコンクリート建造物を全体的観点から構造的に見た場合、構造体と呼び、その構造を抜きにしてコンクリート建造物を示す場合、たんに躯体と呼びます。

一般に壁ないし外壁といわれるものは、この躯体にセメントモルタルやタイル陶片を張り付けたもので、張り付けた部位を、仕上げ部と呼び、私たちが一般に目にする外壁は、この仕上げ部をさしております。したがいまして躯体と仕上げ部とは一体化したものではありません。

それゆえ上記の複合的諸要因が外壁に加わり、さらにこの外壁内部に剥離が生じていた場合、地震等による大きな揺れや振動が生じると、剥離部の空間を介して躯体部と仕上げ部とが別々の運動をおこし、衝突とその衝撃により、外壁が破壊され落下するのです。

このような事態を避けるためには、躯体と仕上げ部とを一体化した外壁となし、仕上げ部を躯体と共振させることが必要となります。この一体化させる方法が、アンカーピンニング部分(全面)エポキシ樹脂注入工法です。工法の原理はいたって単純なもので、ドリルでタイル・モルタルの仕上げ部から躯体部30㎜まで穿孔し、その穿孔穴と剥離した空隙部とに接着剤を充填します。そして最後に全ネジ切ピンを差し込んで外壁を一体化するというものです。この一体化により、躯体に亀裂が生じると、仕上げ部も同時に亀裂が生じます。これは決して工法の欠点ではなく、大きな重要な長所となります。

なぜなら、これと対照的な工法が近年開発された「カバーリング工法」に見ることができます。これはパネル及びネット等で外壁を覆ってしまう工法で、地震対策に有効とされています。しかしこの工法は最初の本震に対する揺れには効果をもつものの、余震に対して改善策が提供されていません。もしも本震で躯体にクラック(亀裂)が生じ、余震でさらに亀裂が拡大し倒壊の恐れが発生しても、損傷部が被覆材によって隠されているため、目視によっては外壁の損傷状況を確認しようがありません。これがカバーリング工法とピンニング工法との最大の特長上の違いです。確かにこの既存のピンニング工法は、現在、古い工法とも見なされもしますが、健全な施工と修繕が行われさえすれば、常に目視をもって二次災害に迅速に対応できるもっとも確実な工法となるのです。

以上のようにピンニング工法は、確実性をもつ原理的に単純な工法ではありますが、しかし穿孔する対象が硬い陶片やコンクリートであるだけでなく、外壁にも様々な種類があるため、一律に扱うことはできません。したがいましてまず外壁の主だった種類を知っていただき、ついで、上記の単純な作業手順にしたがい、ピンニング工法の説明をしていくことにします。また、下記以外の外壁については、添付資料01「タイル張り各種方法」を参考にしてください。